古い本をすすめたい人

好きな人の話。

古い本をすすめたくなったら、
その人のことが好きなんだと思います。

新しいことって、
それだけで価値がありますね。
朝日に照らされたように、
光に揺れて、
輪郭が定まらず、
未知と期待と可能性を感じさせる。
そんな魅力が。
新しい本、新しい映画、新しい音楽。

でも、
そんな魅力を取っ払った古いものこそ僕は好きです。
人目に触れない洞窟の中、
時間をかけて固まって、
鉱石のように内に光を蓄える。
そんな魅力があると思っています。

流行りに関係なく、
そんな鉱石を取り出してすすめたい人のことを、
僕はきっと好きなんだと思います。
恋愛とか関係なくね。

古い本。すすめるとしたらなんだろう。
ジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』。
ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』。
ポール・オースターの『ムーンパレス』。
何度も何度も読み返した本たち。

日本だったら澁澤龍彦や向田邦子。
泉鏡花や夢野久作はどうだろう。
銀色夏生の詩もいいですね。

時たま光が当たりますが、
目にしたことがない人も多いでしょう。

こういった本をすすめるときは、
すごくドキドキします。
枕詞が何もない、
「僕の好きな本」だから。

よく話題に上がるわけでもなく、
何かの原作でもなくて、
僕がいいと思うから、
すすめたくなった本。

本だけじゃなくて、
古い映画もいいですね。

僕が一番好きなのは、
『ガタカ』という映画。
遺伝子操作が当たり前になった世界で、
「愛」によって生まれた男の話。
四半世紀前の映画だったかな。

他にも、
『ダークナイト』や『ブリグズビーベア』、
『君の名前で僕を呼んで』、『マダム・イン・ニューヨーク』。
『ワンダー』に『パターソン』。
『トゥルーマン・ショー』も忘れちゃいけない。
レオス・カラックス監督だとなんだろう。
まずは『ポンヌフの恋人』だけど、全部すごいからな。

監督といえばスタンリー・キューブリックやマーティン・スコセッシも。
もちろん黒澤明もいいんだよね。
ああ、日本映画なら『座頭市』もあった。
勝新太郎がかっこいいんだ。

観客動員とか売り上げとか、
そんなのもうわからないから。
おもちゃ箱から出したように、
ごちゃっとおすすめするよ。

古い歌もいいですね。
森田童子やスーパーカー。それにそれに。
辞めておきましょう、あげだしたらきりがない。

好きな人とは新しくない話がしたい。
人目に触れなくても持ち続けた、
結晶みたいな話がしたい。
そう考えています。

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